三重県名張市にある街のパン屋、のどかな丘のパン店honoka.。
honoka.といえば名張市の百合が丘では有名なパン屋の1つだろう。そんなhonoka.のオーナー、若干30歳の若きパン職人、堀川祥司さんにパン職人になったきっかけやこれからの展望までを取材してきた。
きっかけはお菓子作り
堀川さんに初めてお会いして真っ先に思ったことが「すごく優しくていい人」だった。笑顔やほんわかした口調がそういった印象を与えるのだろう。そんな堀川さんがパン職人になるきっかけとなったのが母親の趣味であるお菓子作りだ。堀川さんは小さいころから母親と一緒にお菓子を作っていたそうだ。
「お菓子作りはレシピ通りに作れば、何とか形になったりするじゃないですか。それで作れる気になって、次にパンに挑戦してみたんですよ。そうしたら、カチカチのパンができたり、全く膨らまなかったりでうまく焼けなかったんです。」
一筋縄ではいかないパン作りに悔しさを覚えながら、堀川さんは何度もパンを作り、分厚い小麦や発酵のことが書かれた本を読みながら、どんどんパン作りに夢中になっていった。できあがったパンはクラスの子や先生などに配っていたそうだ。
「作ることがうれしかったし、いいパンができるとうれしかった、そして、人に食べてもらうとよりうれしかった。」
母からもらったきっかけともっともっとうまくなりたいと思う向上心が今の堀川さんを形成しているのだろう。
パンとの日々
パンに魅せられていた堀川さんは高校のときに将来パン職人になることを決意し、製菓の学校に通いはじめた。製パンではなく製菓を選んだのには1つの思いがあったからだった。
「製パンか製菓で悩んだんですけど、自分がやりたいのはパンということは決まっていたので、もっと違うことを勉強して幅を広げたいなと思って製菓の方に決めたんですよね。」
その後、同じ志をもった仲間と切磋琢磨した日々を経て、神戸のパン屋で働くこととなった。
そこからは怒涛のパンづくしの日々が始まり、堀川さんは睡眠3〜4時間という生活の中でパンと向き合っていった。
のどかな丘のパン店honoka.の誕生
8年後、神戸と東京のパン屋で修行を積んだ堀川さんは高校生のときから抱いていた地元でパン屋を開業したいという夢を叶えるため帰郷した。
地元でお店を探しているときにたまたま高校時代の先輩に最近閉店した店舗物件があることを教えてもらった。始めは厨房機器を譲っていただければという気持ちでそのお店に向かった堀川さんだが、何度か通っているうちに街並みや雰囲気が堀川さんのイメージと徐々にリンクしていき、働いている姿までが想像できるようになっていた。ここで働きたいという思いを堀川さんは大家さんに伝えると、大家さんは快く承諾し、お店を持てることとなった。
2012年3月、家族、仲間、お店に携わった様々な方のおかげでhonoka.がオープンした。
この街に愛されるお店に、子供に希望を与えられるお店に
honoka.の人気商品のパンドミは湯種(ゆだね)という製法で作られている。このhonoka.のパンドミはもっちりとした食感と独特の風味で普通の食パンとはひと味違う。リピーターができるくらいだ。honoka.にはその他にもくるみパンやチーズポテトパンなど、バリエーションにとんだパンが売られている。子どもたちが来たら大喜びだろう。
今後の目標について堀川さんに尋ねてみた。
「パン屋の商圏って半径500mって言う方もいるんですが、とても小さい商圏の商売だと思うんです。近所の方々のためにパンを焼く。地域のコミュニケーションの場になればって思ってます。あと、小さな子どもたちが自分と同じようにパン創りに夢を抱いてくれるような仕事を日々していきたいですね。」
地域に根付き、地域に愛され、自慢したくなるパン屋、それが堀川さんが目指すパン屋だ。
今年で4年目を迎えるhonoka.。変わらない笑顔と成長する技術で目標に向かって走り続ける。
文/ 奥田光輝
プロフィール
堀川 祥司
1985年生まれ。辻製菓専門学校を卒業後、神戸三宮 ブランジェリーコム・シノワ、神戸御影 小麦、世田谷区三宿 ブランジェリーラ・テールで修行。2011年に帰郷し、名張市百合が丘にて、のどかな丘のパン店honoka.を開業。